転校生

転校生がやってきた。ところが黒づくめで顔さえもベールで覆っている。外人だから耳慣れない名前だけど、担任がくん付けではなくさん付けで呼ぶからには女の子か。休み時間になって、とにかく顔を見てみたいと思った河島くんが、その転校生のベールを捲った。そしたらその子ったら泣きだして教室を飛び出していったっきり戻って来ない。次の授業が始まっても戻ってこないので担任が探しに出て行ったが、担任もそれきり戻ってこなかった。代りに教頭先生がやってきて自習するように言った。自習と言われて素直に自習する訳がない。ついつい話は件の転校生の話になる。すると、山下さんが「顔にベールをかけるのはほにゃにゃら教なんやで、ほにゃにゃら教は顔を見られたら死んでしまうねんで、あの子も顔みられたからきっと死ぬんや、そやし、あの子のおっちゃん怒るでぇ。ほんで、顔見た人に目ぇをくり抜くで。」と言った。そしたら、河島君が「ぼく捲ったけど顔みてへんもん」と、しゃくりあげながら泣き始めた。