高校生の唾液が

人前で欲を満たすことは恥ずかしいことであるとの文化的基盤があるので、歩きながらバーガーにかぶりつくとかコンビニのお握りにかぶりつくとか、フォークに突き刺したステーキを電車に持ち込む等の行為を成すと、痴れ者と指を刺されるのは必至であります、と言うと、ほ〜、するって〜となんだ、お前は人前で飯を食ったことがないのか、と直ぐに理屈をこね繰り回す輩がいる。しかし、バーガー屋、の店内は欲を満たしていい場所との暗黙の了解があるからして、店内であれば、いかな人前であろうともバーガーにかぶりついていいし、ぼろぼろとピクルスが落ちてもちゃんと下にトレーとかあるので非常に衛生的かつ合理的なのである。

いや、そんな前置きはいいとして、たまに知人に引きずられるようにしてバーガー屋なんかに行くと、あ、バーガーだけだと咽乾くし、コーラも頼むし、でもセットメニューとかあるし、別々に注文するのも面倒だし、なんかセットメニューって割安なんでしょ、お得なんでしょ、じゃ、これにします。これください。等と貧乏根性丸出しでセットメニューを頼んでトレーを持って席に着くのですが、さて、知人と雑談などしながらバーガーとコーラーを交互に口に運んで、ま、たまにはバーガーなんかもいいね、と思って、さて、セットメニューだから、ポテトついてるのよね、お得ね。とか貧乏臭い考えを悟られないように、一本ずつ口に運びながら更に知人と雑談。しかしですね、これ咽乾くのですよ。塩味効いてますし、ぼそぼそとした食感は唾液を無闇やたらと吸い取りますし、これを嚥下するにはやはり水分が必要だな、と、コーラの紙コップを手に取る。うんがぁ。先程バーガーを食うときに飲み尽くしてしまった。しゃーない。で、お冷やは？と店内を見渡すに、普通喫茶店とか入ればお冷や出てくるじゃん。なんでここお冷やないの。これっぱかしのセットメニューのコーラで咽を潤せると思っとんのか、こら、おどれ！とか椅子の上に立ち上がって喚きちらしそうになった自分を辛うじて抑えながら、はて、なんだ、氷しゃぶればいいんだ、と蓋を開けて直接紙コップに口を付けて氷をゴリゴリ噛みしだきながら、なるほど、そう言うことか、とはたと膝を叩きながら納得しましたよ、わたしは。要するに、咽が乾くならコーラを追加注文しろと。そやさかい、お冷やださんのね。ふうん。その考え方いいじゃん。まこと資本主義の王道じゃん。商人じゃん。さすがバーガー屋じゃん。と納得したのである。と言うことはだな、セットメニューのトレイを手にしてそこら中に高校生が散らばってるこの店のことである。さぞかしひっきりなしにコーラの追加注文にやってくる高校生でレジが溢れかえっているのであろうとレジの方に目をやる。あれ？コーラの追加注文に並んでいる高校生がいない。なんで？そうか高校生は唾液の分泌が豊富なのでコーラの追加注文はいらないのか。羨ましい。高校生の唾液が。