その知人は。目を輝かせて。


普段、開くのに力がいるドア。何故か、無茶苦茶に軽い。何時も通り、力を込めて開いたらすっぽ抜けてあっちにバタコンと当たって跳ね返ってきて、親指をぶつけて、それから中指を挟んでくれた。爪の下で内出血が滲み出す。

久し振りに痛い思いをしたので、ふと「痛みフェチ」の知人を思いだす。「どうしたの?」やら「だいじょうぶ?」とは聞かないのである。「痛い?」と先ず聞いて来る。その後、どの様に痛いのか、どれほど痛いのか、畳みかけるように、そして執拗に聞いて来るのである、その知人は。目を輝かせて。


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© 2001 佐々木仁志